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鍼灸学科 東洋医療コース 東洋の真髄と西洋の科学性を修めた、患者さんを笑顔にする「臨床に強い鍼灸師」を目指そう。

2011/10/07(金)

心に残る症例

戸田静男

 私は、若いころ著名な小説家を鍼灸治療したことがあります。鋭い感覚の持ち主で、治療しながら凡人には表現しえないような言葉で語っていただいたことを今でも思い出します。それまで秀才型の人を治療することはよくありましたが、このような天才と思えるような人は初めてでした。数回でしたが治療をして、満足した評価を得ることが出来ました。その時、教わった教訓があります。小説家は書き終わったら、すぐ次の仕事にかからなければいけないそうです。そして、さらに良質の作品を世に出すことが重要で、そのためには、いつも感性を磨いておくことだそうです。私は、現状に甘んじることなく、常に努力することの大切さを教えていただいたと思って、今でも肝に銘じています。
 ある高名な画家の鍼灸治療をする機会を得たことがあります。お会いした時は、おそらく80歳ぐらいではなかったかと思います。その方は、大変上品で偉そうにすることもなく微笑みながら淡々としていました。でも、毅然ともしていて、しかしながら腰が低い方でした。私は、偉い人ほど言葉には出ない偉さが体から出てくるのだと思いました。よく「存在感がある人」と言いますが、そのような言葉を超越したものがありました。私はそんなところまで到達できませんが、常に謙虚に患者さんに接して行こうと思っています。治療家は、患者さんから色々なことを教わります。患者さんは、治療家にとって先生であると思います。日々の経験や体験を糧にして、さらに治療を向上させていくことが必要です。そのような意欲、意識で治療をしていると、患者さんも感じてくれます。
 本学の鍼灸治療室で、次のようなことを経験しました。仕事上のストレスで会社に行けなくなった方を、何とか会社に行けるようにしてほしいという相談を受けました。現代の複雑な高度情報化社会では、このような方は多く見受けられます。それは、本人やご家族からの強い要請でした。人間は、いくら体が大きく頑丈でも弱いものです。辛抱強くコミュニケーションを取りながら、鍼灸治療をしていきました。紆余曲折はありましたが、今では立派に会社勤めをされています。このような好結果を得ることが出来たのは、私の鍼灸治療だけではなく、患者さんのよくなりたいという意欲だと思います。  私は、患者さんに治療してよかったと評価してもらえ、頼ってもらえるような鍼灸師になりたいといつも思っています。
 写真は、大学玄関前のモニュメントに刻まれた「建学の精神」です。これが私の精神的支柱です。

戸田先生、ブログ写真.JPG


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