
2011/11/11(金)
こころに残る症例 -アトピー性皮膚炎にかくされた謎-
中国の伝統医学では、「気」の流れに注目した経絡という「気」のパワーを循環させるエネルギールートの存在を重視しています。古来、日本に伝わった鍼灸や漢方薬も、やはりこれら身体に流れ行く「気」を動かすことに着目し、さまざまな疾患を治療してきました。今、テレビなどでも、「気」は身体のエネルギーのこととし、「気」が健全に循環していると「血」の巡りがよく、全身の筋肉の動きがスムーズに行われると宣伝しています。つまり、車でいうと「気」は、丁度、ガソリンに例えることが出来ます。私たちは、このエネルギーを燃やすことで、健康で快適な生活を日々、過ごすことが出来るのですが、何らかの原因によって、体の中の「気血」が"みちくさ"すると、全身に十分なエネルギーが巡らなくなります。すると肌や筋肉、脳や五藏六府(内臓)に十分な栄養源が届かないために、全身のエネルギーが失われ、機能低下が始まり、さまざまな病気を引き起こされるのです。鍼治療はこれらの "みちくさ"した「気血」の流れを整え、体の中で滞っている気を散らして、経絡の中にある経気のめぐりを促し、「気血」の流れをよくすることで、人体を正常な状態に戻そうとする治療法なのです。
さて、人体のパワールートである経絡は普段は目で見ることができないのですが、まれに経絡現象として体表に現れることがあります。今回は、私が体験した経絡現象についてご紹介したいと思います。三十代、女性のアトピー性皮膚炎の患者さんを治療していたところ、皮膚の表面に経絡の「流れ道」に沿って黒い細い線のようなものが現れました(先ずは実際の写真をご覧ください)。この画像を見るとかかとのあたりからふくらはぎにそって、茶褐色の線状のものが皮膚上に現れているのが分かるでしょうか? 経絡は合計十二本ありますが、その中でも、腎と関係するパワールートが、丁度、足の裏にある湧泉(ゆうせん)というツボから始まり、かかとから、ふくらはぎに沿って膝から腰に向かって「気」の流れを促しています。この患者さんに、腎と関係するパワールート上にある太渓(たいけい)というツボに鍼を刺したところ、茶褐色の線として下腿部の内側に沿ったルートが確認できました。
このような現象は日常の臨床で頻繁に見られるものではありませんが、将来、鍼灸の知識と技術を学び、そして、チャンスがあれば、現代科学で未だ解明されていない東洋医学ならではの"未知との遭遇"を体験できるかもしれません。

