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鍼灸学科 東洋医療コース 東洋の真髄と西洋の科学性を修めた、患者さんを笑顔にする「臨床に強い鍼灸師」を目指そう。

2011/12/16(金)

心に残る症例

深澤 洋滋

 これまで臨床を通じて、様々な疾患に苦しむ患者さんの治療にあたってきました。それぞれの患者さんから多くのことを学ばせてもらえたと感じています。ここでは、その中の1つの症例を通じて考えたことを少し、お話ししていきたいと思います。
 とても快活で紳士的な70代の男性の症例です。ある日、その男性は右手首の母指側に鋭い痛みを感じるようになりました。その痛みは次第に強くなり、患部が腫れてきたため、近くの整形外科を受診されました。診断は、腱鞘炎でした。投薬と湿布剤による治療が行われた結果、腫れはおさまってきたものの、手首や親指を動かすことにより引き起こされる鋭い痛みはなかなか消えず、医師には手術を勧められました。しかし、手術には踏み切れず、医師との相談の上、鍼治療を受けることを選択されました。8回の治療で、痛みが消失し、大変喜んでもらったことを記憶しています。
 実際の臨床では、この様に症状が軽快し、大変喜んでもらえるケースもありますが、なかには、治療を続けるものの、症状に変化がなく、最終的には患者さんが治療を断念してしまうケースもあるのです。
 近年、鍼灸治療への期待の高まりから、多くの専門機関でその治療効果についての検証が行われました。残念ながら現代医療に基づいた検証を行っても、その多くで治療効果に対して明確な有意性を明らかにすることが出来ないという結果となりました。この結果を受けて執筆された本が出版され、鍼灸治療に大きな波紋を投げかけ、私自身も深く考えさせられました。
 医療をはじめ、治療を行うことは常に患者さんにとって最善でなくてはなりません。また、他の治療を受ける機会を奪うものであってもいけません。先ほどの症例のように鍼灸治療により症状の改善が見られる場合もありますが、鍼灸治療を優先させるあまりに、他の治療法を受ける機会を奪うことがあってはいけないのです。今後は、どのような治療を受けてもらうことが今の患者さんにとって最善であるかを、より正確に見極めることが私達に求められるようになると思います。そのため、これまで報告されている様々な臨床・基礎研究をもとに東洋医療と現代医療が互いに補い合える分野についての理解を深めることが必要となるでしょう。まさにこれが本学の目指す統合医療の姿であり、現代医療では十分対処できない部分に対して補完的に治療を進め、患者さんに寄り添った治療を行うことが、私達に求められる姿なのかもしれません。

挿入写真(深澤).jpeg

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