
kansai: 2009年7月アーカイブ
2009/07/03(金)
本学が教育するトップダウン過程の評価
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科講師の高崎恭輔です。
今回は本学科で学生さんたちが勉強している理学療法の特徴をご紹介したいと思います。理学療法士の仕事は患者さんに「障害」を克服してもらうためのお手伝いをすることです。我々理学療法士が治療の対象にする「障害」とは「立てない」「歩けない」「起き上がれない」など「基本動作」と呼ばれる動作がうまく出来なくなっていることをさします。
「基本動作」がうまくできなくなる理由としては、筋力が弱くなっている、関節が硬くなっている、関節や皮膚の感覚が悪くなっているなどの原因(これを「機能障害」といいます)がありますので、理学療法士はそれらを改善することで患者さんの「障害」の回復をはかります。
理学療法では、このような「基本動作ができなくなる原因」を見つけ出していくことを「評価」と言いますが、この「評価」の方法は大きく分けると2種類あります。
ひとつの方法は、患者さんに様々な「検査」を一通り行い、その検査結果から問題となりそうな「機能障害」を順番に治療する「ボトムアップ評価」という方法です。この方法は多くの検査を行うので確実に機能障害が見つかるという利点がある反面、検査に時間がかかりすぎて治療になかなか進めないという欠点があります。
もう一つの方法は「トップダウン評価」という方法です。これは患者さんが困っている動作を実際リハビリテーション室の中でみせて頂いて、動作を分析することからどこの関節が硬くなっているのか、どこの筋力が弱くなっているのかを予測する方法です。
この「トップダウン評価」では、まず動作をみることである程度機能障害を絞ってから検査をしますので、スピーディーに評価を終えて治療に進むことができるという利点があります。しかしその反面、動作をしっかりと分析し見極める能力が身についていなければいつまでたっても患者さんのどこに問題があるのかを見つけられないという欠点があります。
そういう意味で、理学療法を勉強中の学生さんや、若い理学療法士は時間がかかっても確実に機能障害を見つけられる「ボトムアップ評価」が向いていると言われています。そして理学療法士として「ボトムアップ評価」の経験をつむうちに徐々に「トップダウン評価」ができるようになると考えられています。
しかし本当にそうなのだろうか?と我々は疑問を持っています。
ひとつ例え話をしましょう。人類が宇宙に行けるようになったのは飛行機が自然に発達していつしか大気圏を抜けたのではなく、大気圏を抜けるためにはロケットが必要であると考え、それを新たに造り始めたからだそうです。つまりロケットを造るための努力を一から始めなければ人は宇宙に出られなかったのです。理学療法評価の習得もそれに似ていると思います。つまり習得することが難しくてもより効率的な「トップダウン評価」の技術を身につけるためには、はじめから「トップダウン評価」の方法をトレーニングしつづけなければならないのです。「ボトムアップ評価」の経験を積み重ねるうちにいつの間にか「トップダウン評価」ができるようになるというわけではないのです。
本学科では、少し極端な言い方ですが「トップダウン評価」しか練習しません。
なぜなら、最も多くのことを吸収できる学生時代から「トップダウン評価」を習得するためのトレーニングを始めることで、理学療法士として一日も早く第一線で活躍できる力を身につけてほしいと考えているからです。もちろん高いレベルの技能を身につけるためには困難な道を歩まなければなりません。そのためにおそらく他の大学では要求されないような難しい課題を本学では次々とこなして行かなければなりません。それは学生さんたちにとっても、我々教員にとっても大きなチャレンジです。でもあえてその道を選んだのが本学理学療法学科です。
「学生時代から『トップダウン評価』のトレーニングを始めることが重要である」そのことを学生と教員が一丸となって証明していきたいと思い、日々努力しています。

